【再掲】「ありがとう。」は生きる力


「あなたっていつも " ありがとう " って言っているわね。」 もう6年程前の話です。 長女が欧州のインターナショナルスクールに通いはじめて間も無い頃、当時まだ英語力が不十分だった長女を手助けしてくれる友人達が、そう言ってにっこりしたのだ、と軽く驚いたように私に話してくれました。 当時、クラスに日本人は長女一人だけ。 クラスメイトの女の子たちは、年度の途中で加わった、共通言語である英語力がほとんどない長女に、学校生活について、友人関係について、長女にたくさん身振り手振りを加え教えてくれました。 長女は「みんなが言っていることはなんとなくわかった。」けれど英語で会話をすることは難しいので、心からの「Thank you」はいつも伝えていたそうです。 そして冒頭の「あなたっていつもありがとうって言っているわね。」 さらに、「あなたってとってもPolite(礼儀正しい)ね。」 と、にこっと笑顔で伝えてくれたのだそうです。 そしてそんな英語力はないけれど、いつも「ありがとう。」を伝える長女を、クラスメイトの女の子たちは仲間として受け入れてくれました。 「 コミュニケーション能力 」という言葉は、元々は言語学の分野で用いられた学術的な用語だったそうですが、この経験から、例え共通言語がない状況でも、まずは「ありがとう。」この言葉さえあれば、信頼が生まれコミュニケーションが生まれるのだと実感しました。 その後もヨーロッパの様々な国の街で、レストランで、旅先で、「Thank you」が娘たちの口から自然とこぼれる度、子どもからお年寄りの方までみんな笑顔で応え親切に接してくださいました。 我が子にとって「ありがとう。」の言葉は、特別ではなく日常に溢れる大切なことばでもあり、どこでも他者と和をもって生きるための素敵な魔法の言葉でもある、と実感をもって彼女たちの心と体に浸透しました。 そして最近、日本の小学校に通う次女から、理科の先生がプリントを手渡しで配っていた際、「ありがとうございます。」と言って受け取ったら、「そうやってありがとうを毎回言ってくれるのはあなただけよ、ありがとう。」って言われたんだ、と聞きました。 確かに私自身、学校やイベントなど子どもたちが集まる場を訪れた際、無言で大人から何かを受け取る子どもたちに違和感を感じることが多かったことを思い出しました。 同じく「こんにちは。」「さようなら。」の挨拶も無く無言な子どもたち、そしてその事を気にかけていない保護者の方が多いことにも違和感を感じていました。 「ありがとう。」の言葉は生きる力のひとつ。 お子さんにとってとても大切な言葉のひとつです。 ぜひお子さんから「ありがとう。」が自然な言葉として出るよう、まずは日常生活で「ありがとう。」をお子さんにお伝えください。 そして他者との接触を親子で持ち、「ありがとう」を伝える場面に出合ってください。 例えば先日、魚屋で次女に大きな鰤を見せ説明してくれた店主の方に「ありがとう。」をお伝えしました。 目を輝かせて店主の説明に聞き入り感謝の言葉を伝えた次女に、店主は続けて「自分の得意を持つといいよ。学校の勉強も大事だけれどね、おじさんのように得意なことを持つとこうやって生きていけるからね。」と優しい笑顔で語りかけてくれました。 「ありがとう。」は素敵な出会いをさらに素晴らしいものにも変化させてくれる魔法の言葉でもあるのだと感じました。 もしお子さん自身から「ありがとう。」が出なかった場合は、まずは大人が「ありがとう。」を口にし、お子さんの背中にそっと手を添えてお子さんに「にこっ」と笑顔を向け小さく頷いてみてください。お子さんから「ありがとう。」の言葉が自然と出てくるかもしれません。

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